パール系顔料の配向性向上

Orientation of pearl pigment


 パールやメタリック系の顔料は、平らな薄片状をしており、鱗のような形の粒子が平行に重なり合うことで光輝性を示す。粒子が規則正しく平行に並ぶことを「配向性が良い」とか、不規則に並んでザラザラした状態を「配向性が悪い」と表現する。

 偏光顔料や光干渉顔料では特に、配向性の良し悪しが発色の鮮明さに影響する。光干渉顔料においては、配向性が悪いとカラートラベル領域が狭くなったり、光輝性が極端に失われやすい。発色性を最大限に得るためには、均一な光の反射が重要となる。

 

 光輝性や発色が失われる主な原因としては、顔料粒子の凝集や、光学的な特性を損なう不適切な助剤の使用が考えられる。しかし、適度な凝集状態を安定してコントロールできれば、顔料の沈殿を防止できる利点がある。これらの顔料は粘度の低い塗料系においてケーキング(沈殿)しやすい傾向があり、絵具のような高粘度の系においてもバインダーが分離しやすい。凝集状態のコントロールは、その対策の手段として利用できる。理想としては、保管時には凝集状態を保ち、塗布時に配向性が良い状態になることが好ましい。

 

 配向性を向上させるような助剤であっても、光の透過を妨げるような性質のものは、発色性や光輝性の低下要因となる。

 

 上の図は、 油性ペイントにおいて助剤をパール顔料の層間に挿入した例である。(塗布見本をそれぞれ同じスケールで撮影)

 

 保管状態では凝集状態を維持し(写真左)、メディウムや溶剤の添加によって助剤が膨潤する。パール顔料の層間で助剤が膨潤すると、薄片状のパール顔料が規則正しく配向し、均一な光の反射を得やすくなる(写真中央および右)。保管時は沈殿や分離を防ぎ、塗布時には理想的な配向性が得られる。メディウムや溶剤の任意の添加量によって、粒子感を微調整できる利点もある。

 

 水系塗料では、水和によってカードハウス構造を形成するような助剤の使用で、同様の効果が得られる可能性がある。

 

 

(2012〜2019年 St. Lab.「パール系顔料のレオロジーコントロール」より)